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第551回研修会報告

 学術委員会 原口 隆志
平成25年7月26日に第551回研修会を開催しました。今回は京都医療科学大学の学生による発表と、現役放射線技師による現場の業務改善の取り組みを紹介していただきました。

1.「南丹市自然放射能量の分布図の作成」
飯塚崇文・岩崎大輔・長野祐馬・山方亨介
福島第一原子力発電所事故以降、全国の原子力発電所の運転を停止させたが、福井県にある大飯原発だけ再稼働し、高浜原発についても議論されている。福井県に存在する原子力発電所の事故を想定した場合、事故後の状況と比較できる平常時の状態での放射線量及び放射能量を把握しておくことが重要であると考えた。そこで本学が所在している南丹市の協力の下、市内18ヶ所に調査地点を設定し平常時の環境放射線量及び放射能量の分布図の作成を行い、それらの地点で空間線量率の測定、地面からのガンマ線線量率の測定と土壌中の放射性物質の分析を行った。空間線量率の測定は、可搬型モニタリングポスト(ALOKA)を用いた。結果、南丹市の空間線量率は55〜88 nSv/hと調査地点によって大きな差は見られなかった。地面からのガンマ線線量率をサーベイメータ(富士電気システムズ株式会社)で測定し平均を求めたところ、本学でのガンマ線線量率の日周変動とともに、同じ地点でもかなり変動することが分かった。土壌サンプルの放射能量測定及び分析は、Ge半導体型検出器 GMX型 (セイコー・イージーアンドジー株式会社)で測定した。それぞれの地点で検出されたものは主に自然放射性核種である40Kやウラン系列、トリウム系列、アクチニウム系列の核種であった。

2.「子宮頸癌への小線源治療時における膀胱充満度と膀胱壁の線量の関係について」
船曳政史・棚田康友・神守悠介・赤塚大輔・香西啓久
近年、日本における若年層の女性の子宮頸癌は増加傾向にあり、20代から30代に多く発症している。子宮頸がんの治療法には、主に手術療法、放射線治療、化学療法があり、がんの進み具合やがんの部位、年齢、合併症の有無などによって治療法が決定される。その中の腔内照射は、子宮内に治療用器具を挿入し、子宮の中から放射線治療を行う方法である。病巣近くにたくさんの放射線をあてることができるため、直腸や膀胱などへの影響を少なくすることができる。子宮頸がん腔内照射技術について、腔内照射前に膀胱内に生理食塩水を100cc注入すると膀胱が膨らみ腹側の膀胱表面や消化管の線量を減らすことができるという研究結果があることから、子宮頚癌のリスク臓器である膀胱を研究テーマとして、計算アルゴリズム(モンテカルロシミュレーション法)を利用したEGS5を用いて腔内照射における膀胱の線量分布をシミュレーションし、尿量による膀胱壁の位置や厚さの違いから膀胱壁の吸収線量の変化を検討した。
蓄尿が多くなると膀胱表面が線源から近くなることや表面積が増えることにより、蓄尿するにしたがって膀胱壁の吸収線量が増加してしまう。尿意が200mlで生じることや小線源治療全体では体位保持に60分程度時間がかかることから、あまり尿量を増やせないと考えられる。

3.「放射線によるDNA損傷に関する研究」
田中景子
放射線被ばくは、医学目的の利用であっても極力避けなければならない。人体に対する放射線の負の影響を軽減するには、被ばくの低減化の他、放射線防護剤や放射線増感剤を利用する方法がある。しかし、利用可能なこれらの薬剤は未だごく少数で、その利用範囲は限られたものであることから、有効かつ安全な薬剤の開発が求められている。
そこで、新たな放射線防護剤や放射線増感剤の研究開発を目的として、DNAに対する放射線の影響に関する基礎的検討を行った。実験には、DNAとしてプラスミドDNAを用い、種々の条件下でDNAをX線照射した。照射後のDNAはアガロースゲル電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色後、紫外線照射下で撮像した。X線によるDNA損傷の程度は、無傷のスーパーコイル状DNAのバンド強度を数値化し、その減少程度を基にして評価した。この実験系を用いることにより、DNA損傷に影響する因子や抗酸化剤・ラジカルスカベンジャーの効果に関するいくつかの知見を得た。

4.「X線エネルギーによるデジタル画像(量子化)の限界を探る」
井上真実・金子実佳・宍道知佳・小田敍弘
従来から胸部撮影に使用されているアナログ画像(増感紙/フィルム系)は、撮影管電圧120kV〜140kVを用いて画像コントラストを低下させる高電圧撮影が行われている。特に肺野や縦隔部および骨と脂肪組織とのコントラスト低下は、診断域を拡大し、肺野や縦隔部および骨に重なった血管や病変の診断に有利となる。しかし高電圧撮影は、散乱X線が多く含まれ散乱X線除去用グリッドを用いても画質は低下する。この両者の特徴を持つ線質効果は、「トレードオ

フ」の関係として知られている。
CRシステムは線量、線質が変化しても正規化処理(読み取り感度(S値)および読み取りラチチュード(L値)を変化させること)で常に一定の画像コントラストを保つことができる。
本研究では、胸部人体ファントムを用いてX線エネルギーを変化させて胸部CR撮影を行い、高電圧撮影をしなくても画像コントラストを抑え、散乱X線が少ないX線エネルギーを考察した。具体的には、管電圧70〜140kV、付加フィルタ0.1mm、0.2mm、0.4mm厚を用いた線質の変化による画像コントラストは、0.1以内で写真濃度の差が小さい。撮影時間を考慮して、高電圧撮影140kVよりも低い管電圧80〜100kV、0.1mm〜0.2mm厚さ銅付加フィルタの使用においても、画像コントラストはコントロールできることを証明した。高電圧撮影の線質効果(診断域の確保と画質低下)は、「トレードオフ」の関係があるが、本研究の成果(診断域の確保と画質向上)から臨床応用が期待される。

5.「3Dマンモグラフィにおける最適化および立体空間の解明」
押川千恵・田中和子・南さくら・横井萌子・小田敍弘
近年、ステレオ撮影による3Dマンモグラフィが臨床応用されている。ステレオ画像は、乳腺と重なった淡い病変の視認性が向上すること、腫瘤の内部構造や石灰化の分布の情報が増えることにより、腫瘤や石灰化の良悪性鑑別の診断が容易となることなどが報告されている。
本研究では、両眼視差の特性を利用した立体視の3Dステレオ撮影を行い、2D画像では得られなかった奥行き情報を正確に把握し、適正なステレオ角度や3Dマンモグラフィの有用性および被曝線量の最適化について検討した。
その結果、専用の観察器を使用しない裸眼による立体視のステレオ角度は、ゼロ度の基準角度に対して6度に傾けた撮影が適正な3Dマンモグラフィを得ることがわかった。
ステレオ撮影は2枚の画像を用いるため、被ばく線量は2倍(200%)に増加することが懸念される。本研究では通常線量の画像と低線量画像のステレオを作成しても、人の脳の中では通常線量画像が優先される視覚システムがあることに着目して、X線の被ばく低減を検討した。被ばく線量の最適化は、相対的撮影線量80%と50%によるステレオ撮影(130%撮影)であった。人間の視覚特性を利用したこの線量は2画像200%撮影に比べて70%の被ばく低減が可能である。
最後に裸眼による立体視の3Dマンモグラフィの有用性は、日本人に多いデンスブレスト(乳腺密度が高い乳房)でも、デンス内部の診断が容易となることが期待される。


教育講演「標準化への取り組み」
 独立行政法人国立病院機構京都医療センター 医療技術部放射線科 大西 孝志氏

医療現場で標準化は安全確保の重要な手段のひとつとして考えられている。現在は、一般撮影において撮影方法は確立してはいるが、種々の参考書を見てみると、それぞれ微妙に記述の違いがある。そこで当院では一般撮影法の標準化を試み、今回はそのなかから膝関節と股関節の撮影法をご紹介します。
標準化とは、判断の拠り所や行動の目安になるものを設け、それに従って統一することとあるので、標準化の第一段階としてマニュアルの作成を行った。昔のアナログ時代でのマニュアルは、撮影条件、現像方法、そして撮影方法となっていた。デジタル時代である現在では簡単に過去画像と比較できたり、リハビリ関係等の他職種の方も画像を見たりするので、再現性の重要度が求められている。

膝関節正面の位置付けとX線入射位置について、複数の参考書を比較してみてもそれぞれ記載が異なっている。脛骨前縁の角度が参考書により10°〜13°と異なっている。被検者が座位か臥位かによっても膝の角度は変わり、位置付けする術者によっても測定する膝の角度がまちまちである。結果、被検者が座位で膝を進展している状態を膝正面の位置付けとしました。関節間隙を抽出するには入射X線束を尾頭方向に7°傾けるべきですが、関節間隙を観察するのは立位撮影が適切であるので、臥位での撮影では、関節間隙抽出よりも再現性の担保のために、垂直の入射としました。正面性の指標は膝蓋骨が内外顆の中心に位置しているのが参考書の解説ですが、膝蓋骨は可動性があり、位置が一定していません。なので、顆間窩腔が左右対称の山型に抽出されていることが正面性の指標としました。そのために撮影時には、大腿骨の外側上顆と内側上顆が同じ高さになるように体位付けます。
膝関節の側面に関しては、大腿骨の内外顆の後縁の重なりが5mm以内にするようにしていま
す。その他の条件として、膝蓋大腿関節が広く、膝蓋骨は接線状に、大腿脛骨関節腔が顆間隆起部を除いて広く抽出されている、こととしています。

膝関節軸位撮影の合格基準として、膝蓋大腿関節腔間隙が均等に広く投影されており、膝蓋骨が軸位像であること、としました。
股関節の撮影法に関しては10種類ほどありますが、一般的には正面とラウエンシュタインI法が多く用いられているのではないでしょうか。
股関節の撮影で実際に触れることのできる部位は、仙骨、坐骨、恥骨、恥骨結合、尾骨、上前腸骨棘、大転子があります。左右の上前腸骨棘と大転子の中点を結ぶ線の中心部が股関節の高さと一致しますので、ここをX線束の入射点とします。下肢の体位としては、大転子を触れた状態で下肢を外旋から内旋させていき、大転子が一番大きくなった状態で撮影する、こととしています。ラウエンシュタインI法としては、骨盤を45°横に傾けた状態で、大腿下に補助具を入れて外転しすぎないようにしています。
位置付け以外の取決めとしては、撮影前に被験者自ら名前を名乗っていただくようにしています。複数部位の撮影に関しては、胸部、腹部、脊椎、というように画像サーバーに送信する順番を決め、さらに同一部位に関しても、正面、斜位、側面と、送信の順番が決まっています。頸椎に関しては撮影順が側面より行い、その画像から正面の管球振り角(ルシュカ関節に合わせる)を決定しています。再現性の確保のために、過去画像がある場合には、必ず確認するようにし、撮影マニュアルに沿わなかった撮影に関しては、画像にコメントとして記載しているので、それを確認してから撮影を行います。
京都医療センターでは「伏水塾」として今回ご紹介したような取り組みについて、時には他部署も交えての勉強会を開催しています。伏水塾は他施設の方でも参加可能ですので、私までご連絡いただければ、開催をお知らせいたしますので、皆様もどうぞご参加ください。

京都府放射線技師会 | 学術 | 00:36 | comments(0) | - | - |
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